文献レビュー表(文献マトリクス)の作り方:列の決め方、テンプレート、そこから書く方法

文献レビュー表は、読んだ論文を 1 行ずつ、比べたいことを 1 列ずつ並べた表です。研究の問い、方法、データ、結果、著者が述べた限界、そして自分のテーマ。どの列を置くか、論文の本文からページ付きで行を埋める方法、シンセシス・マトリクスや注釈付き文献目録との違い、表から本文を書く手順、そのまま使えるテンプレート。

文献レビュー表(literature review matrix、文献マトリクスとも)は、読んだ論文を 1 本 1 行に、論文をまたいで比べたいことを 1 つ 1 列に並べた表です。その論文は何を問い、どう調べ、どんなデータで、何を見つけ、著者自身は何を示せないと認めているか、そして自分のどのテーマに関わるか。この表があるのは、レビューを論文ごとではなくテーマごとに書くためです。行を横に読むのではなく、列を縦に読む。下に書くことはすべて、この 1 つの目的から出てきます。

列を表で 1 枚

決まった列の組はありません。アドラー大学の図書館の手引きなどは「引用情報、キーワード、場所、目的、研究デザイン、主な結果、メモ」といった例を挙げ、自分の研究に合わせて列を足し引きするよう勧めています。ここでは、私たちがうまくいった組を、論文の中で情報が出てくる順に並べます。

列書くこと論文のどこにあるか
引用情報著者、年、短い題名。文献管理ソフトのキーなし
研究の問いその論文が何を問うているか、1 文で抄録、序論の終わり
方法・デザイン実験、調査、モデル、事例研究、コーパス、レビュー。主な手法方法
データ・対象何を測ったか、誰を調べたか、どれだけか。N、年、場所方法、表 1
主な結果論文が拠って立つ 2〜3 の結果を、数値つきで結果、抄録
著者が述べた限界著者自身が「この研究では示せない」と書いたこと考察、限界の節
テーマ A、テーマ B、…自分のレビューのテーマごとに 1 列。チェック印か、その論文がそのテーマについて言っていることを 1 行どこでも
自分の問いとの関係その論文が自分の問いにどう関わるか、自分の言葉でなし
ページ・メモ上のそれぞれの記入のページと、疑わしい点なし

数か月後にも使える表にするには、決まりが 2 つあります。論文が述べたことを書いたマスには、必ずページ番号を添える。あとで戻って確かめるためです。そして「著者が述べた限界」には著者が書いたことだけを入れ、自分の批判は「自分の問いとの関係」か「メモ」に書く。どちらが誰の言葉かが、はっきりするように。

作り方、手順で

  1. 最初の行を書く前に、範囲を決める。 レビューが答える問いと、テーマの候補を 3〜5 つ書き出します。あとで変わりますが、先に書いておくことで、読むことが「さまよう」ではなく「表を埋める」になります(自分の表の作り方を記事にしたノースカロライナ大学ライティングセンターのコーチは、読む前に表を用意したことでチェックリストができ、メモを取るのが気楽になったと書いています)。
  2. 精読の前に行を作る。 題名から結論までの1 回目の読み、5〜10 分で、引用情報・研究の問い・方法は埋まります。そもそもその論文に 1 行を割く価値があるかも、ここで決まります。
  3. 論文についての列は、論文の本文から埋める。 研究の問い、方法、データ、結果、著者が述べた限界は論文についての事実なので、それが書いてある節から言い換えて書き、それぞれの横にページを添えます。引用でなく言い換えで。短くなり、文を理解してからでないと先へ進めなくなります。
  4. テーマは出てきたときに足す。 3 本目の論文が、列を用意していなかった話題について何かを言っていたら、列を足して、前の行に戻ります。20 本読んでも空のままの列は消してかまいません。それはテーマではなかったのです。
  5. 行を正直に保つ。 論文が述べていない欄は空のまま。うろ覚えの結果は、ページで確かめてから入れる。自分が考えた限界は「メモ」に書き、「著者が述べた限界」には入れない。
  6. 並べ替えて、絞り込む。 行が十数本を超えたあたりから、表が働き始めます。方法で並べ替えれば実験的に何が調べられたかが見え、テーマで絞れば誰と誰の意見が食い違うかが見え、年で並べ替えれば議論がどこで動いたかが見えます。
  7. 列に沿って書く。 テーマの列 1 つが、段落か節 1 つになります。その列の論文が一致していること、分かれているところ、どの論文もやっていないこと。行が段落になることはありません。それは注釈付き文献目録であって、レビューではないからです。

行は論文か、テーマか

どちらもあり、名前はゆるく使われています。上の表のように 1 行 1 論文の形が、多くの図書館の手引きで文献レビュー表やシンセシス・マトリクスと呼ばれているもので、読んでいる最中には自然な形です。新しい論文が新しい行になるからです。ライティングセンターの配布資料には、これを裏返した形もあります。1 行 1 テーマ(主張)、1 列 1 論文で、行がそのままレビューの段落になります。2 つ目の形は、1 つ目の表をテーマの列で並べ替えたときに現れるものです。読んでいる間は論文を行にし、書くときにテーマを行にする。別のシートに写すのが楽なら、そうしてください。

表から本文へ

表はレビューそのものではありません。どの手引きも同じ 1 つの間違いに注意を促しています。行を 1 つずつ段落にしてしまうことです。「Smith は…を見つけた。Jones は…を見つけた」と論文ごとに並べたレビューは、一覧です。「X の問いについては、3 本の実験研究が…を見いだす一方、2 本の調査は…」とテーマごとに書いたレビューは、論証です。表があれば、全部を読み直さずにそれが書けます。

うまくいく進め方はこうです。テーマの列を 1 つ選び、その列で並べ替えるか絞り込んで、縦に読む。一致、不一致、その方法論上の理由、そして空白(空のマスがそれです)を書き留める。メモの列のページ番号を横に置いて、その段落を書く。そして次の列へ。レビューの節は列の順に出てきて、参考文献リストは引用情報の列から出てきます。

よくある間違い

そのまま使えるテンプレート

上の列を、表計算用と Markdown の表にしました。それぞれのマスに、何を書くかの 1 行が入っています。埋めながら消してください。

論文のためのリーダーが役に立つところ

論文についての列を埋めるのは、遅くて機械的な作業で、本文から下書きできる部分でもあります。Rectoly の論文カードは、論文ごとに研究の問い・方法・データ・結果・著者が述べた限界を論文の段落から書き出し、どの文にもページを付けて、1 行 1 論文の表に並べます。どの文も引いた段落と照らし合わせ、本文で確かめられない文は捨てます。論文が述べていない欄は空のままです。表は review-table.csv と review-table.md に書き出せるので、上のテンプレートにそのまま入り、テーマと自分の問いとの関係の列はあなたの手に残ります。これが正しい分業です。論文についての事実は論文から、論証はあなたから。モデルは自分のパソコンやタブレットの中で動き、何もアップロードしません。論文をまたいで書いた自分のノートも同じ要領でトピックごとにまとめられるので、気づいていなかったテーマの列を見つける近道になります。

よくある質問

文献レビュー表とシンセシス・マトリクスは何が違いますか?

ほぼ名前だけです。どちらも、同じ項目で文献を比べてテーマごとに書けるようにする表です。「シンセシス・マトリクス」はライティングセンターでよく使われる呼び方で、テーマを行・論文を列にした裏返しの形を指すこともあります。「文献レビュー表」はふつう 1 行 1 論文の形です。どちらも並べ替えればもう一方になります。

注釈付き文献目録(annotated bibliography)とはどう違いますか?

注釈付き文献目録は文献の一覧で、それぞれに 1 段落の説明が付きます。1 行ずつ、横に読むものです。表は列を縦に、すべての文献をまとめて読むもので、だからこそ「この問いを文献全体はどう扱っているか」が言えます。表から注釈付き文献目録は作れますが、逆はできません。

何本の論文を入れればいいですか?

レビューが扱う本数だけで、学位論文の 1 章なら 20〜100 本のあいだが多いでしょう。表が効き始めるのは十数行あたり、違いを頭の中に置いておけなくなるところからで、100 本を整理する手段は表しかありません。

必ず要る列はどれですか?

引用情報・研究の問い・方法・データ・結果・著者が述べた限界が論文を記述し、テーマの列が少なくとも 1 つと「自分の問いとの関係」の列が自分の問いにつなぎ、ページの列がすべてを確かめられるようにします。それ以外は任意です。

すべてのマスにページ番号が要りますか?

論文が述べたことを書いたマスには、はい。1 マス数秒の手間で、指導教員や査読者に「その主張はどこから」と聞かれたときの、読み直しの 1 時間が省けます。

AI に表を埋めてもらえますか?

論文を記述する列の下書きはできます。ただし確かめずに信じてはいけません。よく知られた失敗は、本文に無いもっともらしい文や数値です。どの文にもページを示し、1 文ずつ段落と照らし合わせる道具(Rectoly の論文カードはそうしています)を使い、大事なところはページを開いてください。テーマと自分の問いとの関係の列はあなたの論証なので、自分で書くほうがよいものです。

表計算、Word の表、Markdown のどれで?

並べ替えや絞り込みをしたくなったら表計算です。それが表の目的ですから。Word の表は並べ替えられません。Markdown は、ノートの横に置く十数行なら十分で、表が育ったら表計算に変換できます。

いつから表を始めればいいですか?

2 本目の論文より前に。あとから足す行は、読み直さなければならない論文です。

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